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バイト雑記

この前バイト先のおじさんがクビになった。そのおじさんは色白で常にうっすらニヒルな笑みを浮かべていて、お客が入店してくると少し笑いながら睨みつけて「いらっしゃいませ・・」と小声で言ってスッと近づいていくという、るろうに剣心とかで妖刀を使うキャラみたいな接客をしていてお客から「怖い店員がいた」とクレームをされたりしていたおじさんなのですが10年以上この漫画喫茶でバイトをしているためまったくクビにならず、むしろ店長を陰で「ダメなんだよねえあの人は」といじったりしていて堂々とした人だった。

うちの漫画喫茶の深夜帯はまったくといっていいほど暇なので、ある程度仕事が終われば1時間ずつくらいで休憩を回していくスタイルをとっている。別に店長もそれでOKと言っているので皆何を隠すわけでもなくそういう風に休憩を回しているのですが、なぜかその怖いおじさんと入る時だけそのおじさんは30分ずつで休憩を回そう、と言ってくるのです。皆さんあまりピンとこないかもしれませんが、夜勤において30分ずつ休憩を回すというのは体調的にかなりキツく、なぜなら1時間休憩だとしっかり仮眠をとることができたり、漫画を読んでからちょっと寝れたりということができます。しかし30分休憩だと寝るにしても短すぎるし、漫画を読むにしても短すぎるので結局ボオッとして終わりなのです。しかもそのおじさんは30分休憩を4セットとるというトレーニングみたいな時間の回しかたをするのであんまりに疲れている日は休んだのか休んでないのかもうわからなくてフラフラになることがよくありました。

ある日そのおじさんと一緒のシフトに入ったとき、また「じゃあ30分ずつ休憩まわしますかあ」と言ってきて、その日ライブとオーディションなどで朝から起きっぱなしでかなり辛かったので「すいません。どうしても眠いんで最初だけ1時間ずつで休憩回させてもらうことは可能でしょうか?」と頭を下げたまま聞くと、そのおじさんは黙ってこっちに近づいてきてしばらく黙ってぼそっと「いいよ」と言って休憩に入っていった。めちゃくちゃ怖い王様に意見して死にかけたみたいになった。たかが漫画喫茶のバイトの休憩時間の長さ程度で三国志の怖いシーンみたいにしないでほしい。というかそもそも休憩時間なんてまとまってとれるほうが楽に決まってるのになぜ
そんなに30分で回したがるのだろうという疑問が常にあり、そのおじさんが休憩にいってからしばらくしてジュースを飲もうと思いドリンクバーのところまでいくとそのおじさんが休憩に使うために入ったブースの扉が開いていて、電気は消えているけどあれ、おかしいな、と思い何の気なしに近づいてみるとそのおじさんが真っ暗のブースの中でパソコンも漫画もなにもせずにただただ椅子に座っていて起きていたのを見て死ぬほどびっくりしたのを覚えている。たしかにもう10年もここでバイトしてたら今更漫画やパソコンなんていらなくなるのかと思った。あの時は本当に怖かった。

なぜそのおじさんがクビになったのかというと、やはり「怖かった」からである。僕がいちど体験した怖いことは、レジでお客さんの接客をしていて、お客にお釣りを渡しそのまま帰って行ったのを見ていると急に耳元で「木田くんはまともにコップも拭けないの?・・」とそのおじさんの声がしておもわずわあ!と言ってしまった
ことなどがある。漫画などでよく気づかない間に背後をとられていて主人公が(ゾッ・・!)みたいなシーンがあるがあれとまったく同じだった。夜勤中にいきなり背後をとるのはやめてほしい。僕は基本的に怒られてもすいませんすいませんと謝るので別段そのおじさんをそこまで怒らせることもなく何ともなかったのですが、新しく入った新人の人などはどれもそのおじさんに怒られまくってあげくに「あの人が怖くて・・」と伝言を僕に残して辞めていく人ばかりで店長や社長からも再三「怖くしないように」という注意があってもそのおじさんはどんどん怖いことをやり続け、しまいには新人の子が片づけたスリッパの片づけ方がおかしかったという理由で店長がいる横でスリッパの入っている箱を思いっきり投げ飛ばし自分で1から片づけだしたらしくそれを見た店長が(あれはもうおかしい)と思って首を決心したらしい。僕は店長にそのおじさんがクビになるからと聞かされた時、ここでずっとバイトしてて38歳でいきなり首って言われて怖いだろうなという思いがあって少し切なくなった。
後日に店長が本人に「申し訳ないけどクビだから、できるだけはやく次のバイト先を見つけてほしい」と言っていてもうバイトって決めつけてるなあという思いともしかしたら言われた瞬間暴れだすんじゃないかという不安がありましたが本人は穏やかな顔で「わかりました」と言って台掃にいっていて驚いた。めちゃくちゃ強い敵が力を出し切った末に倒され、心のどこかで俺はこうなることを望んでいたのかもしれない・・と爆発して死んでいくシーンがありますがそれみたいだった。その後に「あの、大丈夫ですかね。バイトとか、見つかりそうですか?」と声をかけると、ニヒルに笑いながら「さあねえ」と言っていて退廃的だった。俺たちに明日はないの日本版があればぜひやってほしい。

このおじさん以外にも、バイト全体の時給を勝手に変えようとしてクビになったおじさんがいたりと色んなおじさんがクビになっているのですが、これはもう僕もひとごととしては笑えず、ただお笑いをやっているというだけでほぼ条件的にはそのおじさんたちと一緒で僕もそう遠くない未来に新人の子たちが間違えて片づけたスリッパを怒りのあまり床にぶちまけたり、妖刀使いみたいな雰囲気で接客したりするようになって(あれはもうおかしい)となってクビになるのもない未来ではないのだ。
というかすでに徐々にそちら側にのまれていて、気づいたらわりと雀鬼みたいな接客態度になりかけたりしているので何とか普通にしないといけない。しかし客の質があまりにも悪く、この前もパンツ1枚で店内をうろついている翁がいたので「すいません。パンツで店内を歩かないでください。ズボンを履いてください」と真っ直ぐ翁に注意すると、翁は立ったままコーラを飲みながら「オッケー」と返事してきたことに腹が立ち、まあでもそれを抑えてバイトをしているとその爺がレジにきて「枕とブランケット貸して」と言ってきたので貸した後に今はちゃんとズボン履いてるのかとカウンターから出て確認するとちゃんと履いていたのでまあそれならと戻ろうとしたらその翁がこっちを見て「大丈夫だよ、ズボン履いてるから」と勝ち誇ったように笑いながら言ってきて腹立ちと悔しさのあまり動けなくなった。さっきは履いてなかったやろ。なんで1回もパンツのまま店内をうろついてないみたいな態度でかかってこれるのか。ろくでもない、ほんとにまともじゃない。奈良から出てきて東京でこんな目に会いたくない。もっと楽しいのがいい。

この前はマセキに入ってから初めて番組の前説に行かせてもらいました。普段TVで見てる人とかがそのまま目の前にいて喋っているというのは不思議な感覚になるもので、自分が知らない世界というのはどこまであるのだろうとクラクラします。僕が今のところ東京で詳しいことは僕のバイト先の漫画喫茶で毎回シャワールームだけ利用するおばさんの客のだいたいのくる時間帯や、バイト先の階段を上がってくる時の客と新聞屋さんの音の違い(新聞屋さんの時だと接客をしなくていいのでホッとする)などなどなのでとうていメディアマンではないということです。
by akuta-seiryou | 2017-06-02 05:30 | 日記


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