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近未来 NSC 

「これがお笑いや。お前らわかったか!」
ここは2250年のNSC東京校。戦争などで無い代もあって今は東京NSC200期だ。知らない人に説明するとNSCというのはよしもとクリエイティブエージェンシーが経営しているお笑いの養成所で、あの伝説の芸人ダウンタウンが大阪校の1期生として卒業していたりと実績のある養成所だ。
ここ2250年の東京NSCの先生はサイボーグ漫談で2200年ごろに大ブレイクした下清水 雪易さんが教えている。下清水先生が芸人のころの名前は「メタルサイボーグfff」という名前で、自分の足を急に腕のチェーンソーで切り落としながら口のスピーカーから綾小路きみまろの漫談を流し、次は自分の舌をハサミでジョキジョキ切り始めたと思うと大量の水を耳からだしはじめて爆音でB’Zを鳴らし始め、綾小路きみまろとB’Zの曲を同時に鳴らしながら本人は面白おかしく踊りまくり、綾小路もB’Zも最高潮に達したなと判断した瞬間に小爆発を起こし、舞台上でいなくなったかと思うと、すごすごと下清水先生本体が出てきて「お笑いでした~」というスタイルの漫談で一躍ブレイクを果たしたのだ。
「お前らの芸は笑えへん。笑いは意外性とアイデアや!研究しろ!」
僕を含め生徒たちは皆静まっている。しかしはっきり言ってもう下清水先生の信じている笑いのスタイルというのは50年以上昔のもので、今の僕たちには古臭い。耳から水を出したり足を腕のチェーンソーで切り始めたりというのはもう古い。下清水先生が僕たちに押し付けてくる笑いというものはすでに過去のものだ、と僕は思う。
「よっしゃ・・ほな次は・・シャークサンドスターズ! おい準備せえ!」
ネタ見せに僕たちのコンビ、シャークサンドスターズが呼ばれた。僕は相方の小松と一緒に前まで行った。
「なんや? お前らもういけるんかい?」
「はい、僕らは漫才なんでこのままいけます」
「漫才!?お前ら、漫才なんてまだやっとんのか??」
2250年の今、漫才やコントは過去のものとなっていた。下清水先生のようなサイボーグ漫談、コンビやトリオの場合は自作の大音量が出る機械を持ってきてそれを爆音で鳴らし、お客さんの鼓膜を破壊し、その鼓膜を通してお客さんの脳に直接イメージで笑いの情報を送るという手法が一般的だった。
つまり視覚と聴覚だけで笑うといった文化は廃れていっていたのである。
「そうです。僕らは漫才です」
「そうか・・ほなやってみい」
下清水先生が右腕のチェーンソーを外してメガネをかけた。僕は相方の方を見て頷いた。相方も頷き返した。
僕は第一声を放った。
「どうも~シャークサンドスターズです」
「はい。よろしくお願いします」
「あのですね小松くん」
「どうしたの」
「僕ね、お笑い以外にも役者の仕事とかもしてみたくてね。特に刑事ドラマとかしたくてね」
「はいはい」
「知ってます?刑事ドラマ」
「知ってますよ」
「犯人にお腹刺されて苦しんで、最後にかっこいいこと言って殉職とかしてみたいのよ」
「おおわかった」
「ほんなら俺刑事するから、お前俺を刺してくる凶悪犯やって」
「わかった」
「おい!小松。それ以上無駄な抵抗は辞めるんだ!」
「誰がお前なんかのいうことを聞くもんか!」
「ナイフをこっちに渡せ!」
「うわああああ!!! グサ」
「ぐはぁあ・・な・・な」
「ハァハァハァハァ」
「なんじゃ・・こ」
「グサ!」
「おい!」
「何?」
「最後にかっこいいこと言わせろよ!」
「え?」
「だからトドメさしたらあかんねん! もっかいやるぞ」
「わかった!」
「おい!小松。それ以上無駄な抵抗は辞めるんだ!」
「誰がお前なんかのいうことを聞くもんか!」
「ナイフをこっちに渡せ!」
「うわああああ!!! グサ」
「ぐはぁあ・・な・・な」
「みなさ~~~~ん!この人これからかっこいいこと言いますよ~~!!」
「おいやめろ! 恥ずかしいわ!」
その瞬間だった。僕の心臓と相方の心臓が爆発した。
NSCに入る前、芸人志望が増えすぎたこの世界を調整するために手術で心臓にある機械がつけられた。それは基準値以下の面白くないことをした生徒の心臓を爆破させるための機械だった。まさか俺たちがその機械によって殺されるとは思わなかった。これは自殺なのか他殺なのか。なによりも皆の目線が恥ずかしかった。「面白くなかった」が理由で死ぬなんて恥ずかしすぎる。僕は死ぬ寸前に下清水先生と目が合った。下清水先生は優しく笑っていた。僕は下清水先生があんなに優しく笑っているのを初めて見た。「気づけてよかったな」と言われてる気がした。あーあ
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by akuta-seiryou | 2014-06-21 20:47 | 色々 | Comments(1)

泳ぎだす恋

今日は彼氏のトモヤと水族館に行った。トモヤは魚が好きみたいで、前から行きたいと行っていた。私はあまり魚は好きではないのだけどあんまりにもトモヤが行きたいと言うので行くことにしたのだ。私たちは水族館で様々な魚を見た。小さな小さな虹色の魚や、水槽の底の方をフラフラと泳ぐ細い魚、勇ましげにピンと体を張りスイスイと泳ぐ大きな魚。トモヤは子供のようにそれらの魚に魅入っていた。
私も私でだんだんと楽しくなってきた。たまには水族館に来るというのもいいものだ。私はふと時計を見た。するともう15時だった。
「ちょっとごめんね。トイレに行ってくる」
私はトモヤにそう言うとトイレに入った。運良く個室が空いていたので個室に入って、私はウンコをする時みたくお尻に力を入れた。ブチブチブチブチという音がして何匹かの魚が私のお尻から出てきた。
「おかしい。これで全部じゃないわよね」
そうつぶやいて再度お尻に力を入れると、鼻の辺りで違和感がした。私は咄嗟に鼻の辺りに手をかざすとズルズルズルと鼻の穴から魚が出てきた。よかった。やはりお尻から出てこなかった分の魚が鼻から出てきたのだ。私はそれを両手で受け止めて便器に戻した。
私が毎日15時になるとお尻から生きた魚が出てくるということになったのはつい1年前の19歳の時だった。
その時私は今の彼とは別の男の子と付き合っていて、デート中だった。
ちょうど喫茶店に入ってお茶をしている時、それは急に私を襲ってきた。我慢しまくった便意に近いような強烈な何かが体中を走ったと思った次の瞬間、私はお尻から大量の生きた魚を吐き出していた。
当然喫茶店は大パニック。マスターは慌てて雑巾を持って魚達を拭きに来た。私は何が起こったのか、この魚たちは本当に私の体から出てきたのか様々な疑問と戦っていたのだけど、お尻の穴のあたりに感じるヌメヌメとした感触が全てを物語っていた。もちろんその日を境に彼氏にはフラれた。生きた魚を急に肛門から出す彼女なんてたしかに私でも嫌だ。そう頭ではわかっていても心はそれらを理解することを拒んだ。彼氏に「別れよう」とその場で言われたとき私は自分が尻から生きた魚を漏らした事実やもろもろでパニックになり笑ってしまっていた。彼氏は私の返事を待たずに店を出ていた。私は今でも「別れよう」と返事ができなかった事を後悔している。それから私は外科医にも内科医にも行った。どこの病院でも原因は不明と言われた。精神的なものかとも思いそっちのほうの病院にもいってみたのだけどダメだった。お寺や薬などありとあらゆる手段に頼ったのだけど、そのどれも私に満足する答えは与えてくれなかった。
結局私は毎日おむつを履くようにした。不思議とその魚の現象が始まってから私には生理がなくなったので、少し厄介な生理だと思えば何のことはなかった。ただ私はカフェでバイトしているので、早番で入った日のバイト中におむつの中でズルズルと魚が動いているのは気持ちのよいものではなかったが、それもまあご愛嬌程度だった。お尻から魚が出てくるそれより、本当に大変だったのはその後だ。
私はその魚を食べないといけないのだ。食べると言っても噛み砕くのではなく、飲み込むといった感じだ。
そうしないととてつもない高熱にうなされ、次にお尻から魚が出てきてそれを飲むまで治らないのだ。一度出して飲み込まないと次に魚が出てくるタイミングはまったくわからなくなってしまう。1週間後の時もあれば2ヶ月後の時もあった。今日はひさしぶりのトモヤとのデートで張り切っていたのでおむつを履くのを忘れていたのだ。私はなんてドジなんだろう。
「あ~あ」
私は便器に顔を近づけ、手で魚をすくおうとした。私が肛門から出す魚は日によって違う。フナの日もあればサバの日もある。飲み込んだからと言って同じ魚が出てくるわけではないのだ。
「あれ?」
今日の魚はなかなかつかめない。よく見てみると今日の魚はヌメヌメしていて何だかウナギに似ていた。私はしばらく便器の水をバシャバシャとやりながらやっとの思いで1匹ウナギを捕まえた。そのウナギをズルっと飲み込んだ。便器にはまだまだ魚たちが残っている。これは長い戦いになりそうだ。私がやっと3匹目のウナギを飲み込み、小さなグッピーを手にしたところにトモヤからLINEで連絡がきていた。
「大丈夫?しんどいの?」
そういえば魚を捕まえるのに夢中でもうかれこれ40分ほどトモヤを待たせていることになる。どう返事をしようか。悩んでいる間にメッセージが追加で送られてきた。
「お腹大変なの?救急車呼ぼうか?」
トモヤはとても心配性なのだ。私はこれ以上トモヤを待たすわけにはいかないと思った。
ふと便器に目を移した。まあまだ魚は残っているが、一応3匹もウナギを飲み込んだしグッピーも飲み込んだのでまあ高熱になるということはないだろう。もしか何かなったとしても微熱やそこらで収まってくれれば幸いだ。そんなことより私はトモヤを離したくない。
「大丈夫!待たせてごめんね。すぐもどるよ」
私はそうメッセージを送ると便器の水を流して外に戻っていった。
トモヤを待たしていた場所に戻るとトモヤがホッとした表情をして
「よかった。倒れていたのかと思った」
と言ってきた。
「大丈夫よ。ほんとにトモヤは心配症なんだから」
そう言って私は笑った。幸せだった。こんな時間を過ごせるならお尻から毎日15時に魚が出てくるくらい何でもない。
私には介護用おむつがある。そう思いトモヤと笑いあった。
すると水族館全体を揺らすような音量で「ゴンッ ゴンッ ゴンッ」という音が聞こえてきた。
何だなんだとお客も騒ぎ始めた。私たちもキョロキョロと周りを見渡した。するとどうだろう。水族館中の魚たちが一斉に水槽の壁にむかって体当たりをはじめていたのだ。
その中にはクジラの姿もイルカの姿もあった。水族館の係員たちがインカムでしきりに会話をしている。どうやら彼らも何が起こってるのかわからないようだ。私たちは唖然としていると、やがて水槽にヒビが入った。
そのヒビはゆっくりと確実に大きさを増して行った。私とトモヤは目を合わせ息を飲んだ。
「パンッ」という音がして、水族館の水槽が割れた。そこから大量の水が館内に流れ込んできた。大小さまざまな魚がその水にまかせてなだれ込んできた。館内はもう大パニックだ。トモヤは驚き、私の手を握って「逃げよう」と言ってきた。
しかしちょうどその時私のお尻からもなぜか大量の魚が漏れ出しているのに私は気づいていた。
このままトモヤについていっても私がお尻から魚を出す女だというのがバレてしまい、フラれてしまう。
そう考えると私は動けなかった。トモヤに手を引っ張られながら棒立ちをしている私の足元くらいまで既に水は浸水していた。すると遠くから虹色の小さな魚の大群が私めがけて泳いできた。その後ろにはマグロ、イルカ、なんとクジラまでいる。私はその瞬間に全てを理解した。彼らは一斉に私の体の中に入ってくるつもりなのだ。私はトモヤの手を離した。トモヤは何か叫んでいる。私の耳にはもう聞こえない。腰のあたりにエラのようなものが生え出してきた。
足の先からだんだんとウロコのようなものが生えてくるのがわかる。そして何より私は今、トモヤよりあの虹色の小さな魚の大群の先頭のオスの魚に性的な魅力を感じている。私は彼を私の中に入れたい。それでもう充分だった。私は目を閉じた。水はだんだんと館内を襲っていった。もう皆が生きてるかどうかもわからない。時間がゆっくり流れ出した気がした。魚たちはすごいスピードで私めがけて泳いでいた。私は動かずそれをいつまでも待とうと思った。
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by akuta-seiryou | 2014-06-05 05:49 | 色々 | Comments(8)