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実家と仮想通貨

母親が仮想通貨に騙されているかもしれない。

僕は実家が奈良県なので、母親も当然奈良に住んでいるのだが半年ほど前に実家に帰った時「スージーコインを買ってん」と言ってきた。スージーコインというのは何なのか。まったく聞きなれない言葉に驚いてる僕に母親が得意気に「仮想通貨やん」と言ってきた。

仮想通貨、僕の家はどちらかというと裕福ではなく以前僕が東京で家を借りる際に親に連帯保証人を頼んだ時に不動産屋から「親の貯金額を教えてほしい」と言われ、母親に「貯金いくらあるか教えて」と連絡すると「全然ないで!ほんまに!ほんまにない!」と若手芸人のリアクションで言われ「ほんまにないっていってもそんなないことないやろ」と言っても「ほんまに!ほんまにやから!」と言う母に「とりあえずいくらあるか写真送って」と言ったら40000円という残高が写された写真が送られてきた。ほんまになかったのだ。

そんな状態である我が家が、仮想通貨を?僕の頭の中では一瞬で「詐欺」や「騙される」「田舎を狙った」などのワードでいっぱいになり「それ大丈夫なん?詐欺とかじゃないん?」と聞くと「知り合いの玉子の社長からここだけの話、て教えてもらったから大丈夫」と全然大丈夫じゃない感じのことを言われた。

玉子の社長というのをまず聞いたことがない。全玉子のトップに立つ人間なのか。社長の玉子?と思いそれはそれで怪しいが「社長の玉子?」と聞いたら「玉子の社長」と返された。どうやら知り合いで奈良で玉子会社の社長をやってる人が「ここだけの話」とお母さんに教えてきたそうだ。どうにも怪しい、と思って深く話を聞くとますますよくわからなくて「辞めた方がええと思うで絶対」と言うと「まあでももう10万買ってもうたから、、」と言って苦笑いみたいな顔をしてきた。

「まあお母さんらもそんなお金ないからこれ以上は買えへんしなあ」「宝くじみたいな感じでな、まあ、ええやん」と言ってきた。うちは毎年年末ジャンボ宝くじを1万円分くらい買って「こんなもん当たらへんからな!夢見る時間を買っただけ!」と母親と父親が揃って笑っていて、いざ発表の段になると全部外れていた宝くじを前にして「はぁ..」と死ぬほど落ち込んで「最初っからわかっててん!こんなん当たらへん当たらへん!!捨ててまおこんなもんな」と憎しみをこめてゴミ箱に1万円分の宝くじを捨てるという本気で7億を狙う姿勢からくる落ち込みのショーを見せられていたので「宝くじみたいな」という言葉は完全に希望がないのと同意なのだがまあ買ってしまったものはしょうがないし、僕としても両親が少しばかりの希望に顔が明るくなってる姿や、もしかしたら、もしかしたら本当にお金が増えたりするのかなという思いもあり「ほんなら好きにしたら」と言っていた。

それが半年ほど前である。僕はつい一週間前くらいにまた実家に帰った。母親に「仮想通貨どうなったん?」と聞くと「それなあ。相談しようとしててん」と言われ不穏だ、と思うと「海外で通帳作るからな、パスポート作ってくれて言われてな」とさらに不穏なことを言われ「あとなんか、王様たまごっていうのと生きくらげていうのを月に1万円買わなあかんくなってん」と言われ「絶対騙されてるやん!!!!」とお笑いのツッコミみたいな気持ちになった。さらに「ユーチューバーのスージーて人がこのコインの説明をしてる」「再生回数は273回」とどんどんボケてくる稀代のパフォーマーになった母親についていけず「ちょっと待ってって、やっぱり怪しすぎると思う」と言ってかなりの時間説得をした。

スージーコインだから、スージーというユーチューバーを作って説明させる、というのが何かもう奈良の田舎の老人たちを甘くみている感じがして無性に腹が立った僕は「絶対辞めてほしい」と強く伝えた。スージーて。「どうしたら騙されてくれますかね?」「うーん。ユーチューバー作るか」「なるほど」「名前はスージーコインだから、スージー!」「笑」みたいな流れで決まったに違いなく、僕をここまで育て上げてくれた母親をそんなやつらが搾取しようとしてるというのはどのようなことがあっても許せない。

「仮に、それがちゃんとした仮想通貨やったとしても、多分普通にめちゃめちゃ難しいと思う。僕らじゃおいつかんレベルの賢い人でも失敗してるねやから。辞めた方がいい。お母さん、辞めて!」と頼んだら「ううん。。そうやなあ。辞めた方がええかあ。そやなあ」とだいぶ弱ってくれた。

お母さん、というのが効いたのだ。息子からのお願いだ、というのを明確に言葉にしたことで母親の気持ちに直接訴えることができた。言葉というのはすごいものである。すると母が少し考えて「わかった。お母さん、辞めるわ」と言ってきた。

僕は歓喜した。とうとう「辞める」という言質を取ることができたのだ。あの手この手で犯人の心をなだめ、ゆさぶり、時には厳しく迫り「僕がやりました」という言葉を引き出した時の刑事やネゴシエーターはこんな気分なんだろう。「でも、一応付き合いもあるから明日最後の説明会だけいってくるわ」と言われた。付き合い?と聞くともともと何人かの友人たちとそれを一緒にやろうとしていたらしく、まあそれくらいは、もうしょうがないかと思った。母も母で色々あるのだろう。

翌日、僕が東京に帰る日の夜に母親が外から帰ってきた。僕は「どうやった?」と聞くと母は「ん〜!でも、海外で通帳作るっていっても、大丈夫そうやってん!!」と言ってきた。スージーにやられたのだ。あの憎っくきユーチューバーのスージーに。僕は母親をスージーに取られたショックで「そんなわけないやん」と声を絞ると母親は「まあまあ。お母さんには水素もあるし。水素水飲むか?」と実家の水道をひねって水素水を出してきた。忘れていた。僕のお母さんは水素もやっていたのだ。スージーコインを倒しても水素が待っている。僕の実家の水道は水素を発生させる装置をつけまくり、合体ロボットみたいな見た目になっている。

僕が子供の頃から使っていた水道とはもう似ても似つかない見た目になっている。人間は変わる、思い出の景色も変わる、それを止めようとするのは良いことであろうと悪いことであろうと本当のところでは家族であれ誰であれ関与できないのだ。「そうか。じゃあ気つけてな」とだけ言って僕は夜行バスに向かう準備をした。「東京でも頑張るんやで」と母親が握手を求めてきた。握手をすると、手があったかく活力がある感じがした。この元気の源はもしかしたらスージーコインと水素のおかげなのかもしれない。それ自体がどうかより、それが母親を元気にしているのならもう良いのかなと思ったが、あまりにも痛い目にはあってほしくないので「お金使いすぎんようにな」と頼んだ。母親は笑いながら任せてくれ、と言わんばかりの顔でうなづいてきた。任せられないから、と思って笑ってしまった。僕は夜行バスに乗って東京に帰ってきた。終わり。

by akuta-seiryou | 2018-02-22 19:51 | 日記 | Comments(0)