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僕らの家におけるルームシェアリビング考察論

今僕は引っ越して芸人5人で住んでいます。僕、サスペンダーズ古川さん、フェー篠原さん、春とヒコーキぐんぴぃさん、舎弟のならたの5人です。僕含めて5人の顔も姿もわからない方が大勢だと思いますが、本気を出して探してみてください。情報過多社会なので3分もあれば全員の情報を集めることができてしまいます。

この家のそもそもの始まりは、栗原君という芸人が主催したあるお笑いライブでの打ち上げの席から始まりました。

打ち上げというのは基本的にまあ喋って飲んでというか、ある程度リラックスした楽しいものなのですが、僕はこの5人と席を囲んでいる時にかつてないほどの心地よさに包まれたのです。非常に新鮮な、それでいて親しみが深い心地よさでした。まるで家の中で部屋着に着替えて酒を飲んでいるような感覚に襲われた僕は「もうこれは住むしかない」と思い、提案すると、そこからは流れるように5人で一緒に住むことになりました。そして予想通り、いざ住んでみると最初は恐ろしいほどにストレスがありませんでした。

ならたは「一人暮らしだと思うと寂しすぎておかしくなっていたと思う」と言っていましたし、ぐんぴぃはしきりに「みんながいると楽しいなあ」と言います。篠原さんは病み上がりすぐにも関わらず「みんなに会えなくて寂しかったから」と療養先の実家からすぐに帰ってきてリビングに延々と居座り三國無双とパワプロを交互にやり続け、さすがに顰蹙を買っていましたが後日その件に対する話し合いを行い5人の絆が深まる一つの出来事として収まりました。古川さんはよく「俺はもう今日は寝るんですよ」と言いながら3時までリビングにいます。
皆それぞれ人恋しいんだと思います。僕も僕で深夜によく散歩にいくのでそれにならたや篠原さんやぐんぴぃに付き合ってもらったりなどをして楽しく過ごしています。

しかし次第にリビングの魔力、全てのやる気を奪う引力のようなものが、僕たちをダメにしてきていました。
同じような見た目の人間が集まるのでストレスがないのです。いつまでもいれてしまう。学生時代にグループが自然に分かれていたと思うのですが、そのような感覚です。誰に対しても無理をする必要がなく、かっこつけることなく、肘を張らなくていい。
僕が一度リビングで皆といる時に「なんだか子供だけで住んでるみたいですね」と言うと皆が目を開きワハハハと笑い、手に持っていた缶酒をぐいと飲んでいました。その光景が今でも脳にこびりついています。子供は酒なんて飲みません。しかし僕は、いえ僕らにとっては確かにリビングは何のストレスもない、誰にも怒られない子供に戻ったような感覚を味わえるオアシスだったのです。ただ、僕らが盲点だったのはそこが本当のオアシスではなく僕たちが意図的に作り出したオアシスだった点です。

仕事や様々な業務に疲れた人はよく「旅行に行きたいなあ」と言います。そして実際に旅行に行く。家族や気の置けない仲間と何泊かの旅行、皆はそこで英気を養い、また日常に戻ります。しかし旅行を年がら年中続けている人がいるとすると皆からいぶかしがられることでしょう。旅行した先で仕事をしている、旅行記事をメインに書いているライター、など何か理由がないとそんなことは許されません。旅行は大人が作り出した意図的なモラトリアム的期間だと思います。何もしなくていい時間をわざとスケジュールに入れることで、気を引き締めてまた仕事に戻れる。そういった時間なのです。そういった感覚を踏まえると、あのリビングはもはやリビングではなくオアシスやリゾート、しかしそのどれもが僕たちが意図的に作り上げたモラトリアムリゾートであり、モラトリアムオアシスだったのです。

僕たちは全員がバイトをしている状態です、そして全員がお笑い芸人を名乗っているので、つまりは自分の才覚を何とかしてお金にしたいと思い生きている、そのはずなのです。

それがこのリビングにいると、居心地が良い。リゾートなので当たり前です。水着姿の女性の代わりに自分の見た目と似たような男がたくさんいますが、それはそれで心地が良いです。しかし僕たちは毎夜毎夜こんなリゾートにいてはいけないのです。

僕はこの家に住んでから、ネタ前に緊張するようになりました。
それもネタ前といっても本当の直前、暗転した状態で舞台の上に立ち、あと数秒でコントが始まる、という時に緊張するようになったのです。自分のすぐ前には100人ほどの人間がいて、今から自分が何かをやって笑わせないといけない。そういう状態の時にリビングの姿が頭に浮かびます。リビングに敷いている布団の上で崩れ落ちたように寝ているならたやぐんぴぃ、部屋着のままで無心にパワプロに打ち込んでいる篠原さん、ズボンがずりさがって半分尻が出ている状態であおむけに寝て、ただリビングの天井を見つめている古川さん、このメンバーの姿が脳裏をよぎり、あんなところから出てきた自分がこんなに大勢の人の前で何ができるというのだというような気分になります。これはこのメンバーを下に見ているという意味ではなく、おそらく向こうから見ても僕も同じですし、というか5人等しく同じです。だからこそそんな自分が何ができるのだと思ってしまいます。この前その状態でネタをして、ウケてびっくりして感動しそうになったことがありました。
これはやはりリビングはあくまで適度にしなければいけない、そう思うには充分すぎる出来事でした。

そしてこれは本当に最近の出来事なのですが、とうとう僕たちのもとに管理会社から連絡がきました。「夜中にうるさいという連絡が頻繁に入っている」という旨の連絡でした。これは本当に反省すべき出来事で、毎晩行われる子供だけのモラトリアム期間にとうとう終止符が打たれました。先ほど僕が述べたリビングオアシス論の前後くらいのタイミングで、メンバーの古川さんもしきりに気にしていており「リビングにいてはダメだ、本当にダメになる」と言っている姿をよく見かけていました。古川さんから他のメンバーに対して過激に統制しようとする動きもちらほらとみえました。ただ僕は言いたいです。リビングがある限り、僕らはリビングとうまく付き合うしかありません。リビングをなくすことはできません。もちろん夜中に大きな声をたてて喋るなどはもってのほかですが、全員が良識を持ってリビングと付き合っていく、意図的なモラトリアムリゾートだということを意識した態度が必要なのではないでしょうか。全員が幸せになるための家として、もう一度この家を再生させたい。僭越ながら、僕はそう思います。

このリビングに関しては様々なことをまだ書けますし、僕は不勉強です。それでも日々の努力をおこたることなく、一人の人間として立派になるための貴重なステージなのではないか、と思います。本日はここで筆をおきたいと思います。

僕らの家から なるべく全員に愛を込めて 2月3日 木田

by akuta-seiryou | 2020-02-03 22:47 | 日記 | Comments(0)